【レベニューマネジメント入門 #01】そもそもレベニューマネジメントって何? 2025年5月30日
【レベニューマネジメント入門 #01】そもそもレベニューマネジメントって何?

ホテル・宿泊業界の売上最大化に重要視されるレベニューマネジメント。レベニュー業務に初めて携わる方からすると高いハードルのように感じるかと思います。
本シリーズではレベニューマネジメント入門として、レベニュー業務に初めて携わる方向けの解説を行っていきます。
第1回となる今回は「そもそもレベニューマネジメントって何?」をテーマに、基礎知識や用語を解説します。
本シリーズが「何がなんだかわからない」といったお悩みを少しでも解消できる助けになりますと幸いです。
そもそもレベニューマネジメントって何?
レベニューマネジメント(Revenue Management)とは、商品やサービスの価格を需要にあわせて変動させることで収益の最大化を図る手法です。
航空業界でも活用されている考え方で、在庫を翌日に繰り越せない業界ではとくに重要とされています。
堅苦しい言い方をしましたが、ざっくり言うと
「いっぱい予約が入りそうなら高くしよう!全然予約が入らなさそうなら安くしよう!」
といった考え方です。
ホテルの客室や航空会社の座席はその特性上、宿泊日・搭乗日を過ぎてしまうとその時点である意味「賞味期限切れ」となり、翌日に持ち越して販売ができません。
そうならないようにあらかじめ需要を予測して、売り上げが一番高くなるように柔軟に料金を設定しよう!というのが基本的な考え方です。
💡 レベニューマネジメントの目的
レベニューマネジメントの目的は「RevPARの最大化」です。
RevPARについては次の章でご説明しますが、ざっくり言うと「上手に販売できているかどうかの指標」になります。
よく出る用語の解説
レベニューマネジメントに取り組む上で覚えておきたい3つの指標があります。
本シリーズでも何度も登場する用語になりますので、まずはここからレベニューマネジメントに親しんでいただけると幸いです。
この章の目次
稼働率(OCC)とは
稼働率(Occupancy Rate、OCC)は、販売可能客室に対する実際に売れた客室の割合を示します。宿泊施設の運営効率を測る重要な指標です。
100室販売できる宿泊施設で75室売れた場合、稼働率は75%となります。
稼働率はどうしてもシーズンに左右されがちです。季節性の解説や稼働率を上げるためにできる取り組みなど、こちらのブログでもう少し細かく解説していますので、こちらもぜひご覧ください。
ADR(平均客室単価)とは
ADR(Average Daily Rate)は、売れた客室の平均単価を示す指標です。宿泊施設の価格設定戦略を評価する上で重要な要素となります。
例えば、1日の客室売上が50万円で、売れた客室が25室の場合、ADRは20,000円となります。
ADRが高いということは、より高単価な客層を獲得できていることを意味しますが、その分顧客の宿泊予算面でターゲットを狭めることにもなります。
⚠️ ADR最適化の注意点
一般的にADRを上げると稼働率が下がり、ADRを下げると稼働率は上がる傾向にあります。この後解説するRevPARの最大化のためには競合分析と需要予測を基に、ADRと稼働のバランスが取れる価格設定を意識しましょう。
RevPARとは
RevPAR(Revenue Per Available Room)は、販売可能客室1室あたりの売上を示す、レベニューマネジメントにおいて重要な指標です。
RevPARは、ADRと稼働率の両方を考慮した総合的な収益指標のため、レベニューマネジメント入門者にとって最も注目すべき数値です。例えば、ADR 20,000円で稼働率75%の場合、RevPARは15,000円となります。
ADRはあくまでも「売れた客室の平均単価」であるのに対し、RevPARは「売れ残りの客室も含めた平均単価」となります。
ADRが過去最高でも稼働率が1%だったら販売ロスと言えますし、逆に稼働率が100%でもADRが過去最低だった場合は価格が安すぎた可能性が否めません。
ADRや稼働率だけを指標にすると上手に販売ができていたのかが判断できないため、総合的な指標のRevPARを最大化することを目的としてレベニューマネジメントを行う必要があります。
📊 RevPAR改善の2つのアプローチ
①稼働率重視:料金を下げて稼働率を上げることでRevPARを改善させる
②ADR重視:高単価客を獲得してADRを上げることでRevPARを改善させる
どちらのアプローチが効果的かは、市場環境や競合状況によって判断が必要です。
レベニューマネジメントの取り組み方

実際のレベニューマネジメント業務は、継続的なPDCAサイクルで進められます。
まずはデータ分析の上でどう売るかの戦略を考え(Plan)、決めた戦略を実行(Do)、実行した戦略がハマったかどうかの効果測定(Check)、よりよい結果を求めて施策の改善(Action)を繰り返すことで収益最適化を図ります。
この章の目次
データ分析と需要予測
レベニューマネジメントの第一歩は、過去データの分析と将来需要の予測です。以下の要素を総合的に分析することが重要です
- 過去の予約・稼働パターン:曜日別、月別、季節別の傾向
- 競合他社の動向:料金設定、稼働状況、プロモーション活動
- 市場環境:イベント、観光シーズン、経済情勢
- 顧客セグメント:ビジネス客、観光客、団体客の需要パターン
🎯 効率的なデータ分析のコツ
全てのデータを詳細に分析することは正直無理があります。
「高需要日」、「部屋数の多い客室タイプ」、「主要OTA」など、まずは売上高への影響度の高い部分だけ切り取って初めてみることをお勧めします。
価格戦略の立案・実行
データ分析の結果を基に、具体的な価格戦略を考え実行します。
戦略の一例や実行方法をいくつか挙げますので、考え方の参考にしていただければと思います。
1. セグメント別/日別の価格設定
曜日別の需要を仮定して異なる価格帯、異なる顧客層へアプローチする金額を設定します。
・平日は国内旅行者が休みが取れず稼働率が低くなりがちなので、インバウンド向けに連泊料金でADRを下げて稼働率を取りに行く
・トップシーズンの売上をもっと伸ばすために、宿泊人数が増えるようグループやファミリー向けのプランを期間限定で作成する
2. 競合ベンチマーキング
同じエリアの競合施設のADR、稼働率、RevPAR、販売価格を定期的に調査し、自施設のポジションを維持します。
だいぶ内部情報になるため、なかなか取得するのは難しい情報かと思います。
販売価格についても全日程を手動で調べるにはかなりの時間がかかるため、外部ツールの導入をお勧めします。
3. ダイナミックプライシング
予約状況に応じてリアルタイムで価格を調整します。予約が好調な日程は料金を上げたり、低調な日程は値下げするなどで稼働率向上を図ります。
最近ではあらかじめ決めたルールに基づいて自動で料金調整をするツールや、AIによる推奨設定を補助するツールなどもあります。
非常に便利なので導入をお勧めしたいところですが、やっぱり少しお値段はしますので費用と機能をじっくり比較した上でご検討ください。
⚠️ 価格戦略実行時の注意点
頻繁な価格変更は顧客や現場の混乱を招く可能性があります。価格変更のルールを明確にし、一定の期間は価格を維持することも大切です。
実績モニタリングと調整
戦略を実行した後は、継続的な効果測定と調整が欠かせません。日次、週次、月次でのモニタリングをスケジュール化し、次の打ち手を考える時間を作るようにすることをお勧めします。
主要な監視指標:
- ・RevPARの前年同期比較:前年の同時期より良い?悪い?
- ・ADRと稼働率のバランス:稼働だけ高くてADRが低くなっていないか?逆にADRだけ高くて稼働が低くなっていないか?
- ・予約ペース(Booking Pace)の推移:前回モニタリング時と比べて予約数は増えた?減った?
- ・キャンセル率・ノーショー率:前回モニタリング時と比べて予約数は増えた?減った?
- ・競合施設との比較:競合施設の販売価格は自施設より高い?安い?競合施設の稼働・ADRはどうなっている?
まとめ
本記事では、レベニューマネジメント入門の初回として、ADR・稼働率(OCC)・RevPARの説明から実際のアクションまでを簡単に解説しました。
レベニューマネジメントには、データに基づく需要予測、競合分析を踏まえた価格戦略、そして継続的な効果測定が大切です。
なんだか敷居の高そうなレベニューマネジメントですが、何より重要なのは継続です。早く取り組みを始めればその分データ蓄積も増えますので、まずはとりあえずできることから始めてみることをお勧めします。
🚀 次のステップ
まずはご自身の宿泊施設の現状や過去実績を把握することから始めましょう。
年度別、月別、部屋タイプ別、OTA別などいろいろな角度から見ることで、きっと売上最大化に向けた気づきが得られるはずです。
担当:OTA販売/レベニューコントロール
経歴:沖縄県内のリゾートホテルで営業・宿泊予約を担当
その後ホテルコンサルティング会社にて宿泊施設の支援業務に従事したのち、
全国に展開するホテル運営会社にて沖縄エリアのレベニューマネジメントを担当。
