【レベニューマネジメント入門 #02】データ分析と需要予測をやってみよう 2025年6月27日

【レベニューマネジメント入門 #02】データ分析と需要予測をやってみよう

データ分析と需要予測

レベニューマネジメント入門シリーズの第2回目では、データ分析と需要予測について詳しく解説します。前回の記事でRevPARの最大化が目的であることをお伝えしましたが、そのためには的確な需要予測が欠かせません。

「データ分析って難しそう…」「どこから手をつけていいかわからない」といったお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。本記事では、レベニューマネジメント初心者でも実践できるステップを具体的にご紹介します。

需要予測の基本的な考え方から、実際に使える分析ツールまで、明日からの業務に活かせる内容をお届けします。

なぜ需要予測がレベニューマネジメントの要になるのか

需要予測は、レベニューマネジメントにおける最も重要な基盤です。なぜなら、正確な需要予測なしには効果的な価格戦略を立てることができないからです。

ホテル業界では、在庫(客室)を翌日に持ち越せないという特性があります。つまり、「今日売れなかった客室は、永遠に売れない」ということです。この制約があるからこそ、事前の需要予測が売上最大化の鍵を握ります。

💡 需要予測の3つのメリット

①機会損失の防止:需要が高い日に料金を安く設定してしまう失敗を防げます

②稼働率の向上:需要が低い日に早めに値下げすることで、稼働率を確保できます

③競合優位性の確保:市場動向を先読みして、競合より優位なポジションを取れます

例えば、来月の連休に向けて、昨年の同時期は稼働率95%だったとします。この情報があれば、早めに料金を上げて収益最大化を図ることができます。一方、予測なしに価格を決めていると、需要の高い日に安く売ってしまう機会損失が発生してしまいます。

需要予測に用いる主な指標とデータ

効果的な需要予測を行うためには、複数の指標とデータを組み合わせて分析する必要があります。レベニューマネジメント入門者が押さえておくべき主要な要素をご紹介します。

過去実績

過去実績は需要予測の最も基本的な材料です。過去の実績を分析することで、需要のパターンや傾向を把握できます。

重要な分析ポイント:

  • 曜日別の傾向:平日・休日の需要差を把握
  • 月別・季節別の変動:繁忙期・閑散期のパターン
  • 客室タイプ別の人気度:どのタイプの部屋が売れやすいか
  • 予約経路別の特徴:OTA・自社サイト・電話予約の傾向

<分析一例:曜日別の傾向>

下記は2025年3月のモデル実績です。曜日別で見ると土曜日のADRが一番高いものの、稼働率では金曜日の方が高い結果となっています。

モデルデータ

もし土曜日の料金が金曜日と同等の14,000円ほどであった場合、稼働率は金曜日の86.8%と同水準まで成長していたかもしれません。

また、もし金曜日の料金が土曜日と同等の15,000円ほどであった場合、稼働率は土曜日と同等の80%ほどにとどまるものの、月間のADRが改善していたかもしれません。

過去実績の活用は、簡単に言うと振り返りを基に予測を立てることです。

人気アーティストのライブ・客室リニューアルによる売止・団体受注など、この日に何があったかの二次情報を合わせて確認できるようにしておくことで、予測の精度を高められるようにしましょう。

外部要因・市場トレンド

宿泊需要は外部要因に大きく左右されます。これらの要因を事前に把握することで、より精度の高い需要予測が可能になります。

主な外部要因:

  • イベント・コンサート:近隣で開催される大型イベント
  • 祝日・連休:カレンダーの並び方による影響
  • 天候・季節要因:桜の開花予想、台風シーズンなど
  • 経済・社会情勢:景気動向、為替レート(インバウンド向け)など

📊 イベントカレンダーの活用法

地域のコンサートホールや観光協会などの情報を定期的にチェックし、需要に影響しそうなイベントを事前に把握しましょう。特に大型コンサートやスポーツイベントは、宿泊需要を大きく押し上げる要因となります。

競合情報

競合他社の動向を把握することで、市場全体の需要バランスを理解できます。自社だけでなく、エリア全体の需要を俯瞰的に見ることが重要です。

収集すべき競合情報:

  • 料金設定:同レベルの施設の価格帯
  • 在庫状況:予約サイトでの空室状況
  • プロモーション:特別プランや割引キャンペーン
  • 口コミ・評価:顧客満足度の変化

需要予測の実践ステップ

実際に需要予測を行う際の具体的なステップをご紹介します。「まずやってみる」を念頭に、段階的にアプローチしていきます。

ステップ1:基礎データの収集

まずは過去1年分のデータを整理することから始めます。完璧を目指さず、まずは手に入るデータから分析を開始しましょう。

収集すべき基本データ:

  • 日別の稼働率、ADR、RevPAR → 価格設定は適切だったか?
  • 予約経路別の売上(OTA、自社サイト、電話など) → 経路別の偏りはないか?
  • 客室タイプ別の稼働状況 → 販売ロスが起こっているタイプはないか?
  • キャンセル率・ノーショー率 → オーバーブッキングでの積み上げは可能か?

⚠️ データ収集時の注意点

データの精度は重要ですが、最初から完璧を求めすぎると作業が進みません。まずは精度を求めずに分析を始め、徐々に改善していくアプローチをお勧めします。

ステップ2:パターン分析

収集したデータから需要のパターンを見つけ出します。Excelやスプレッドシートを使って、視覚的に分析することから始めましょう。

分析のポイント:

  • 曜日パターン:金土日の需要が高い、平日は低いなど
  • 月別パターン:ゴールデンウィーク、夏休み、年末年始の傾向
  • 異常値の確認:特異日(イベント開催日など)の特定
  • 予約タイミング:何日前から予約が入り始めるか

ステップ3:予測モデルの作成

パターン分析の結果を基に、簡単な予測モデルを作成します。最初は複雑なモデルではなく、シンプルな計算式から始めることが重要です。

基本予測式 = 昨年同時期の実績 × 前年同期比 × 外部要因補正

例えば、昨年7月15日の稼働率が80%、前年同期比が110%、近隣でイベントがあるため需要増加要因を1.2倍とすると:

予測稼働率 = 80% × 1.1 × 1.2 = 105.6%

この場合、満室になる可能性が高いため、料金を上げる戦略が適切と判断できます。

ステップ4:予測精度の検証

作成した予測モデルの精度を継続的に検証・改善していきます。これにより、より正確な需要予測が可能になります。

検証方法:

  • 実績との比較:予測値と実際の結果を定期的に比較
  • 誤差の分析:予測が外れた要因を特定
  • モデルの調整:分析結果を基に予測式を改善

分析ツール紹介

分析ツールを用いることで、需要予測の効率化と精度向上が期待できます。まずはハードル低く導入できるものに絞ってご紹介します。

Excel・スプレッドシートなど表計算ソフト

まずは身近なExcel や Google スプレッドシートから始めることをお勧めします。これらでも十分に有効な需要予測分析が可能です。

Excelでできる基本分析:

  • ピボットテーブル:曜日別、月別の集計分析
  • グラフ機能:トレンドの視覚化
  • 条件付き書式:高需要日・低需要日の色分け

💡 Excel活用のコツ

複雑な分析を目指さず、まずは「見える化」から始めましょう。データをグラフにするだけでも、今まで気づかなかった需要パターンが見えてくることがあります。

無料で使える分析ツール

予約データの分析に慣れてきたら、より多くのデータ収集ができるツールの導入を検討しましょう。ここでは無料で使えるツールの紹介をしていきます。

おすすめツール:

💡 OTAが提供する分析データについて

サイトコントローラーやPMSで取得できるデータとは違う角度での分析が見られるのでお勧めです。

閲覧ユーザー数やPV(ページビュー)、転換率やエリア需要など、予約データの分析だけでは取得できないデータもありますが、あくまでもそのOTAの取り扱い高に基づくデータであることには留意しておく必要があります。

実際にやってみる場合の簡易フロー

ここでは、明日から実践できる簡易フローをご紹介します。完璧を目指さず、まずはとりあえずやってみることが重要です。

【第1週】データ収集期間

やること:

  • 過去6ヶ月分の日別稼働率・ADRデータをExcelに整理
  • 曜日別、月別の傾向を確認
  • 明らかな異常値(イベント日など)をメモ

【第2週】パターン分析期間

やること:

  • 曜日別の需要パターンをグラフ化
  • 季節要因の影響を分析
  • 競合他社の料金をチェック

【第3週】予測モデル作成期間

やること:

  • 簡単な予測式をExcelで作成
  • 向こう2週間の需要予測を試算
  • 予測結果に基づく価格戦略を検討

【第4週】実践・検証期間

やること:

  • 予測に基づく価格調整を実施
  • 実績と予測の差を記録
  • 次月の改善点を整理

🚀 成功のポイント

完璧を求めず、継続することが最も重要です。最初の予測精度は50-60%程度でも問題ありません。継続的に改善していき精度向上を目指しましょう。

よくある失敗パターンと対策

失敗パターン1:分析データを完璧にするためにあれこれ調べ始める

対策:精度は二の次でOK。不完全でも始めることが重要

失敗パターン2:分析を複雑にしすぎて時間がかかる

対策:シンプルな分析から始めて、徐々に高度化していく

失敗パターン3:予測が外れて心が折れる

対策:外れた原因を分析し、次回の予測精度向上に活かす

まとめ

本記事では、初歩的なデータ分析と需要予測の手法をご紹介しました。

需要予測は一見複雑に見えますが、基本的なデータ収集から始めて、徐々に精度を高めていくことで必ず身につけることができます。繰り返しになりますが最も重要なのは完璧を目指さず、まずはやってみることです。

ExcelやGoogleスプレッドシートなど身近なツールでも十分に効果的な分析が可能です。今回ご紹介した実践フローを参考に、まずは小さく始めてみることをお勧めします。

📈 今すぐできるアクション

あまり分析に時間が取れないようであれば、まずは過去3ヶ月分の稼働率データをExcelに入力し、曜日別の傾向を確認してみましょう。それだけでも今まで見えなかった需要パターンが発見できるはずです。

   

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