小さな宿泊施設・ホテルの為の写真講座#1 撮影前の準備編 2025年5月9日

小さな宿泊施設・ホテルの為の写真講座#1
ホテル撮影に必要な機材と撮影前の準備編

宿泊予約サイトやSNSの普及により、ホテルや宿泊施設の集客において「写真の質」が以前にも増して重要になっています。

特に小規模な宿泊施設では、プロカメラマンに依頼する予算が限られていることも多いでしょう。
そこで本シリーズでは、施設スタッフ自身が魅力的なホテル撮影を行うためのテクニックを解説していきます。
第1回となる今回は「撮影前の準備編」として、ホテル撮影に必要な機材選び撮影前の準備について詳しく解説します。適切な準備は素晴らしい写真の第一歩です。
この記事を参考に、魅力的な施設写真を撮影するための土台を整えましょう。

1. 目的・ゴール設定 – ホテル撮影の狙いを明確に

何気なく写真を撮り始める前に、まずなぜホテル撮影を行うのかという目的を明確にすることが大切です。撮影の目的によって、必要な機材や準備も変わってきます。

なぜ写真を撮るのか? ブランディング、販促、SNS映えなど

ホテルや宿泊施設の写真には、主に以下のような目的があります:

  • 予約サイト掲載用:宿泊予約の決め手となる公式写真
  • ブランディング:施設のコンセプトや世界観を伝える写真
  • 販促・広告用:キャンペーンやプロモーションで使用する写真
  • SNS投稿用:InstagramやFacebookなどで日常的に発信する写真
  • 口コミ促進用:宿泊者が自ら写真を撮りたくなるような「映える」スポット作り

TIPS:目的別の写真の違い

同じ客室でも、予約サイト用なら「広さや清潔感」を伝える構図、SNS用なら「特徴的な一部分」をクローズアップする構図というように、目的によって撮影方法を変えましょう。ホテル撮影は目的を明確にすることで、効率的に必要な写真を揃えられます

狙いたい客層やイメージの言語化

効果的なホテル撮影のためには、「どんな客層に訴求したいか」を明確にしておくことも重要です。例えば:

  • 家族連れ:安全性や広さ、キッズスペースなどを強調
  • カップル:ロマンチックな雰囲気や特別感を演出
  • ビジネス客:機能性や利便性、作業スペースを重視
  • 外国人観光客:日本らしさや文化的要素を前面に

ターゲットを決めたら、そのイメージを言葉で明確にしてみましょう。例えば「落ち着いた和モダン」「明るく開放的なリゾート感」など、具体的なイメージを言語化することで、撮影時のスタイリングや構図の方向性が定まります。

「1枚の絵(写真)は1,000の言葉に値する」と言いますが、良い写真を撮るためには、まず伝えたいことを言葉で整理することが大切です。

フレデリック・R・バーナード

2. ホテル撮影に必要な機材と準備

適切な機材を揃えることは、質の高いホテル撮影の基本です。ただし、すべてを一度に揃える必要はありません。優先順位をつけて、徐々に充実させていくのがおすすめです。

機材リストの詳細

機材 用途 必要度
カメラ本体 写真撮影の基本機材 ★★★★★
広角レンズ 部屋全体や狭い空間を広く見せる ★★★★★
標準レンズ 料理や詳細部分の撮影 ★★★★☆
三脚 ブレない写真、同じアングルでの撮影 ★★★★★
レリーズ 三脚使用時のブレ防止 ★★☆☆☆
外部ストロボ 光量不足の補完、影の調整 ★★★☆☆
レフ板 自然光の反射、影の軽減 ★★☆☆☆
LEDライト 細部の照明、雰囲気作り ★★☆☆☆

カメラ(フルサイズ or APS-C)

カメラ選びに悩む方も多いでしょう。ホテル撮影においては、以下のポイントを考慮しましょう:

  • フルサイズ:高画質で暗所に強いが高価
  • APS-C:価格が手頃で軽量、初心者にも扱いやすい
  • ミラーレス:軽量でサイレント撮影ができるため宿泊施設での撮影に適している

注意点

最新の高級機種がなくても問題ありませんが、客室の大きさは限られているので部屋を広く見せるためにはフルサイズのカメラがおすすめです。
ホテル撮影では機材よりも「撮影者の目」の方が重要です。

レンズ(広角~標準域が中心)

ホテルや宿泊施設の撮影で特に重要なのはレンズ選びです。予算に限りがある場合は、まず広角レンズを優先して購入することをおすすめします。

  • 広角レンズ(16-35mm相当)客室全体やロビーなどの広い空間を撮影する際に必須
    特に狭い客室を広く見せるのに効果的。
  • 標準レンズ(24-70mm相当):料理やアメニティ、インテリアの細部などを撮影する際に便利。
  • マクロレンズ:細部のディテールやテクスチャーを魅力的に撮影したい場合。

三脚、レリーズ、照明機器

安定したホテル撮影のためには、以下の補助機材も検討しましょう:

  • 三脚:室内撮影では光量が不足しがちなため、シャッタースピードが遅くなります。ブレを防ぐとともに水平・垂直を正確に保つために三脚は必須の装備です。折りたたみ式で持ち運びやすいものがおすすめ。
  • レリーズ:三脚使用時でも、シャッターボタンを押す際の微細なブレが生じることがあります。レリーズ(有線・無線)を使用することで、完全にブレのない写真が撮影できます。
  • 外部ストロボ:天井にバウンスさせることで、自然な印象の室内写真が撮影できます。直接被写体に当てるのではなく、間接的に使用するのがコツです。

室内撮影用のレフ板や小型ライトの活用

自然光での撮影でも十分綺麗に撮れますが、プロのような仕上がりを目指すなら、光のコントロールが鍵となります:

  • レフ板:100円ショップで購入できる白い厚紙でも代用可能。料理の写真などを撮影する際に重宝します。
  • LEDライト:バスルームや暗めの廊下など、光量が足りない場所での撮影に便利。色温度調整機能があるものがおすすめ。

TIPS:予算を抑えた機材調達法

初期投資を抑えたい場合は、レンタルを利用するのも一つの方法です。
特に高価な広角レンズは、購入前にレンタルして使い勝手を試してみることをおすすめします。また、マップカメラやキタムラなどの中古カメラ店では状態の良い機材が比較的安価で手に入ることもあります。

3. 撮影環境の整え方 – ホテル撮影の質を高める下準備

機材が揃ったら、次は撮影環境を整えましょう。
ホテル撮影では、実際の環境整備が写真の質を大きく左右します

掃除・片付け、客室の小物配置

撮影前の環境整備は、写真の仕上がりを大きく左右する重要な工程です:

  • 徹底的な清掃:カメラは人間の目よりも正直です。写真には埃やシミなどが思った以上に写り込みます。撮影前は通常の清掃よりも入念に行いましょう。
  • 不要物の撤去:消火器やゴミ箱など必要なものでも、写真では雰囲気を損なう場合があります。撮影時だけ移動させましょう。
  • 窓・鏡の清掃:光を反射する面は特に念入りに。指紋や水滴が目立ちます。網戸なども可能な限り外した方が眺望がきれいに見えます。
  • 小物の配置:本や花、フルーツなど、生活感や季節感を演出する小物を適切に配置します。

シーツやアメニティの整え方

細部へのこだわりが写真の質感を大きく向上させます:

  • ベッドメイキング:折り目がピンとしたシーツ、ふっくらとした枕の配置が重要です。アイロンをかけるなど、通常以上の準備を。
  • タオルの折り方:ホテルらしい折り方やディスプレイ方法を研究しましょう。
  • アメニティの配置:整然と、かつ使いやすそうに見えるよう配置します。

タイムスケジュールの作成

効率的なホテル撮影のためには、計画的なスケジュール管理が欠かせません:

  • 最適な撮影時間帯を選ぶ:自然光を活かすなら、朝9時~11時か午後3時~5時がおすすめ。
  • 客室タイプごとのスケジュール:似た間取りの部屋はまとめて撮影するなど効率化を。
  • スタッフの協力体制:撮影中の立ち入り制限やサポート体制を明確にしておく。
  • 宿泊客への配慮:共用部分の撮影は宿泊客の少ない時間帯を選ぶ。

TIPS:チェックリスト特典をプレゼント

ページの下部に実際に使っているチェックリストをプレゼントしています。
最後までお楽しみください。

4. 撮影イメージの事前準備

最後に、ホテル撮影の魅力を高めるスタイリングについて考えておきましょう。次回以降の撮影に向けた準備となります。

イメージの具体化と準備

あらかじめ演出のイメージを考えておくことで、必要な小物や準備がわかります:

  • コンセプトボードの作成:Pinterest等で参考になる写真を集め、目指すイメージを視覚化しておく。
  • ターゲット層を意識した演出:ビジネス客向け、家族向け、カップル向けなど。

TIPS:コンセプトボードの作成

私は実際に撮影に入る前日にどういったイメージの写真を撮影するかをNotionにまとめています。
撮影の際に画角は決めますが、事前に辺りをつけることで慌てずに済みます。

5. まとめ – ホテル撮影の準備を万全に

本記事では、小さなホテル・宿泊施設のためのホテル撮影において、撮影前の準備段階で押さえておくべきポイントを解説しました。

  • 目的・ゴール設定:ブランディング、販促、SNS活用など明確な目的を
  • 機材選び:広角レンズを中心に、三脚などの基本機材を揃える
  • 撮影環境の整備:清掃・整理整頓・小物配置で見栄えを大幅に向上

プロのカメラマンに依頼するのとセルフ撮影では、確かに技術的な差はあります。しかし、撮影前の準備をしっかり行うことで、その差を大きく縮めることができます
むしろ、自分たちの施設の魅力を最も理解しているのは、他でもない施設スタッフ自身です。その強みを活かした撮影を心がけましょう。

次回の記事では、実際の撮影テクニックについて解説していきます。構図の基本や光の活かし方など、実践的なノウハウをお届けしますので、ぜひお楽しみに!

   

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