「稼働率」ってどこを見ればいい?初心者向け指標入門 2025年4月8日

「稼働率」って何? 初心者にもわかる宿泊施設の基本指標

ホテルや旅館を運営していると、よく「稼働率」という言葉を耳にすると思います。「稼働率」とは、簡単に言えば「部屋がどれだけ埋まっているか」を表す数字で、売上に直結する大切な指標です。でも「稼働率って具体的に何?」「どうやって計算するの?」「うちの稼働率はいいの?悪いの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。特に、宿泊施設の運営やデータ分析を始めたばかりの方には、わかりにくい部分もあるかもしれません。
この記事では、宿泊施設の「稼働率」について、基本的な意味から計算方法、そして稼働率を上げるための具体的な方法まで、初めての方でもわかりやすく解説します。この記事を読めば、あなたの施設の現状を把握して、改善するためのヒントが見つかるはずです!
「稼働率」って何?基本から理解しよう

稼働率の意味って?
宿泊業界の「稼働率」(英語では「Occupancy Rate」、略して「OCC」)とは、「全部屋数のうち、お客様に使ってもらえた部屋の割合」のことです。簡単な計算式で表すと:
客室稼働率(%) = (使われた部屋の数 ÷ 全部屋数) × 100
例えば、全部で100室あるホテルで、80室が使われた日があれば、その日の稼働率は80%になります。とてもシンプルですね!
でも、稼働率にはいくつか種類があることも覚えておくと便利です:
- 客室稼働率:部屋単位での稼働率(上で説明した一般的な稼働率)
- ベッド稼働率:ベッド単位での稼働率(例:ツインルームで1人利用の場合は50%)
- 収益稼働率(RevPAR):「部屋の平均単価(ADR)×客室稼働率」で計算する、売上に直結する指標
なぜ稼働率って大切なの?
稼働率は単なる数字ではなく、宿泊施設の「健康状態」と「稼ぐ力」を表す大切な指標です。稼働率を知ることが大切な理由は以下の通りです:
- 固定費の回収につながる:宿泊施設は電気代や人件費など、部屋が埋まらなくてもかかる費用(固定費)が多いもの。稼働率が高いほど固定費を回収しやすくなります。
- 機会損失がわかる:「本来はもっと部屋を埋められたはず」という機会損失に気づけます。
- 将来の計画の基礎になる:過去の稼働率データは、将来の料金設定や宣伝計画を立てる時の大切な基礎データになります。
稼働率だけを上げようとすると、値下げしすぎて利益が減ってしまうことがあります。稼働率と「部屋の平均単価(ADR)」のバランスを見ることが大切です。
「うちの稼働率」は良いの?悪いの?数字の見方
日本・沖縄の宿泊施設の平均的な稼働率
「うちの稼働率は良いの?悪いの?」という疑問に答えるには、他の施設と比べてみるのが一番です。日本・沖縄の宿泊施設における平均的な稼働率を見てみましょう:


日本全国ではリゾートホテル:54.8%、シティホテル:74.3%、ビジネスホテル:72.1%、旅館:37%、
沖縄県ではリゾートホテル68.2%、シティホテル72.6%、ビジネスホテル70.6%、旅館27%となっています。出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」
対象期間: 2014年1月~2024年12月(コロナ過の2020年4月~2022年3月)を除くデータを弊社集計
ただし、これらの数字はあくまで平均で、施設のタイプや場所、料金によって大きく違うことを覚えておきましょう。例えば:
- ビジネスホテル:平日(月~金)の稼働率が高く、休日は下がることが多い
- リゾートホテル:休日や観光シーズンの稼働率が高く、オフシーズンは低くなりがち
- 高級旅館:稼働率よりも「1人あたりいくら使ってもらえるか」を重視する場合も
季節によって稼働率は変わる
宿泊施設の稼働率は季節によって大きく変わるのが一般的です。全国的な傾向としては:
- お客様が多い時期(繁忙期):ゴールデンウィーク、お盆、年末年始、紅葉シーズンなど
- お客様が少ない時期(閑散期):6月(梅雨時期)、1~2月(寒い時期)など
こうした季節変動を理解した上で、「年間平均」ではなく「前年の同じ月と比べる」ことが大切です。例えば、1月の稼働率が50%だったとしても、宿泊業界の1月平均が40%なら、実は良い結果と言えるのです。
自分の施設の過去3年分の月別稼働率をグラフにしてみましょう。季節ごとのパターンが見えてきたら、特に弱い時期を重点的に強化する作戦を立てられます。

稼働率を上げるためのカンタン取り組み例

稼働率の現状がわかったら、次は稼働率を上げるための具体的な取り組みを考えていきましょう。ここでは、すぐに始められる実践的な方法をご紹介します。
1. お客様の数に合わせて料金を変える(需要に応じた料金設定)
お客様が多い時期は料金を上げ、少ない時期は料金を下げる「需要に応じた料金設定」は、稼働率向上の基本です。具体的な方法は:
- 過去のデータを活用した料金設定:過去の予約状況や地域イベントから予測して料金を調整
- 早期予約割引:「30日前までの予約で10%オフ」など、早めの予約を促進
- 残り部屋数に応じた料金調整:残り部屋が少なくなったら料金を上げる
- 近くの競合施設の料金をチェック:競合より少し安くしたり、付加価値をつけたりする
料金を変えたら、必ず結果を記録しましょう。「○月○日:料金を10%下げたら→予約が3件増えた」といったメモを残しておくと、次の判断材料になります。
2. 予約を受ける窓口(販売チャネル)を増やす
稼働率を上げるには、お客様が予約できる場所を増やすことも効果的です:
- 複数の予約サイト(OTA)を活用:楽天トラベル、じゃらん、Booking.com、Expediaなど、複数のサイトに登録
- 自社のホームページからの直接予約を強化:特典をつけるなどして、自社サイトからの予約を増やす
- 一元管理ツールの活用:複数のサイトの予約状況を一カ所で管理できるツールを使う
- 法人契約・団体予約の獲得:安定した予約を確保するための長期契約
3. お客様が少ない時期(オフシーズン)の対策
普段お客様が少ない時期の稼働率を上げることは、年間を通じた安定経営の鍵となります:
- 連泊割引:「単泊宿泊時より10%オフ」などの連泊を促す割引
- OTAのセール企画への参画:「じゃらんスペシャルウィーク」「楽天スーパーSALE」など、大手予約サイトが定期的に開催するセールに積極的に参加する
- 期間限定の特典:「アーリーチェックイン」「レイトチェックアウト」「ポイントアッププラン」など
4. 一度来たお客様にまた来てもらう(リピーター対策)
新しいお客様を獲得するコストは、既存のお客様に再び来てもらうコストの5倍以上とも言われています。リピーターを増やすことで、安定した稼働率の基盤ができます:
- お客様のデータベース作り:お客様の好みや利用履歴を記録して次回に活かす
- メールでの案内:季節ごとのお得な情報や新プランをメールで案内する
- 会員プログラム:ポイント付与や会員特典で再訪を促す
- アンケートの活用:お客様の声を次の滞在体験の向上に活かす
お客様のデータを活用する際は、個人情報保護法に注意しましょう。「メール配信を希望する」にチェックを入れたお客様にのみ情報を送るなど、ルール作りが大切です。
まとめ:稼働率アップで売上アップ!
この記事では、宿泊業界の「稼働率」について、基本的な意味から計算方法、数字の見方、そして稼働率を上げるための具体的な方法までをご紹介しました。稼働率は単なる数字ではなく、宿泊施設の健康状態と収益力を示す大切な指標であることがおわかりいただけたと思います。
稼働率を理解して活用することで、空室状況に応じたキャンペーンや料金調整がしやすくなり、結果として売上アップにつながります。まずは、自分の施設の過去データを集めて、月別・曜日別の稼働率パターンを把握することから始めてみましょう。
また、稼働率だけでなく、「部屋の平均単価(ADR)」や「客室あたり収益(RevPAR)」なども少しずつ理解していくと、より総合的な収益管理ができるようになります。「稼働率を上げること」と「部屋単価を上げること」のバランスを取りながら、最適な収益を目指しましょう!